21世紀も9年が過ぎようとする今日、遺伝子生物学や脳科学のめざましい発展と、
それを支えるナノ・テクノロジーや画像処理技術、およびデジタル通信技術の秒進分歩
といわれるほどの急速な進歩、また、数百年来おおくの天才数学者たちを悩ませてきた
フェルマー予想・ポアンカレ予想という2大予想が、それぞれイギリスとロシアの若い
数学者たちによって予想外の方法で解決された事、など多くの科学のめざましい発展が
続いています。
このように実証科学がたえず成果を上げているのに対して、認知や生成を標榜する言
語学が、前世紀、1930年代の言語本質論の水準を超えることがかわなわず、細部の
解釈に没頭しているかのように見える面もあります。「温故知新」の故事に習って、言
語本質論の探求に還るべきなのかも知れません。少なくとも、晩年のエドムンド・フッ
サールに倣ってわれわれも言語学の危機を論じなければならないでしょう。 本年度も、
また学的探求に精進する時期になりました。「言語・認識・表現」 LACE 研究会は、言
語学プロパーに加えて言語哲学から言語処理までの幅広い学的諸分野間の学際的交流の
場として運営されています。2009年度の年次研究会を、下記要領にて開催いたします。
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【日時】 2009年12月12日(土)AM10:30 〜 PM6:45
【会場】 明治学院大学白金キャンパス 本館1251教室
〒108-8636 東京都港区白金台 1-2-37
・交通案内 http://www.meijigakuin.ac.jp/access/
・キャンパス案内 http://www.meijigakuin.ac.jp/campus/shirokane/
■事前登録は不要です。
■■【プログラム】■■
10:30 「アリストテレスのアナロギアが示唆するもの」
佐良木昌 日本大学
(要旨)
アリストテレスのアナロギアは、存在と言語表現とにおける発見の論理であり、異類
を統一する比例的法則性を把握する方法を含む。
アナロギアは、比例関係を基軸とした推論であり類似に基づく推測ではない。アリス
トテレスの『ニコマコス倫理学』のアナロギア論を媒介にして科学方法論としてアナロ
ジーを構築する路が拓かれる。
アリストテレスを中心に、ワッロウ、トマス、ヴァレリーなどのアナロギア論諸説を
概観する。
11:30 「ヨーロッパ的教養の思想的源流・修辞学について」
柴田勝征 福岡大学
(要旨)
ヨーロッパ的教養思想の源流は、紀元前4〜5世紀のギリシャに勃興した修辞学に求
めることが出来る。「よき弁論こそがよき思慮をつくる」とする修辞学は、古代ギリシャ
から古代ローマのキケロに受け継がれ、ルネッサンス期にペトラルカによって再発見さ
れて、近代ヨーロッパ教養思想の土台を形成して今日に至っている。21世紀の教育に
おける、修辞学の果たす意味について検討する。
12:30 休憩
1:15 研究会体制について(研究連絡)
1:25 「世界の言語政策を考える」
河原俊昭 京都光華女子大
(要旨)
歴史的に見て言語政策が注目されるようになったのは、19 世紀のヨーロッパである。
国民国家を形成する一つの柱として、国語を定め民族の求心力を高めようとしたのであ
る。さらには、20 世紀のアジア・アフリカでも各国は言語政策により、宗主国の言語か
らの独立、自国語の確立を図った。21 世紀の現在、国境を越えて人々の流動性が高まり、
世界の各地で多文化・多言語化社会が生まれつつある。今後の言語政策の課題は、各民
族の言語を適切に調整させならば、どの民族にとっても公平な言語社会を作り上げるこ
とである。
2:25 「は」と「が」と俳句と英訳について
岩垣守彦 フリー
(要旨)
日本語には独特の「情報伝達の様態」があって英語に訳しにくい。その典型が「Aは
BがCである」であり,これを深層に潜在させている「俳句」である。しかし、A,B,
Cは,日本語と英語では「表層の形と伝達様態」が異なるだけで、同じである。これら
の要素の組み合わせの妙が、セルゲイ・エイゼンシュタインにモンタージュ手法を思い
つかせたが,英訳された俳句は英語における新しい詩形(俳句風極短詩Haiku-like
extremely short poem)ととらえることができ、それは新しい定型詩として意味がある
が,たとえ17音節を5・7・5のリズムにまとめても「俳句」ではないのはなぜか.
この点を検討したい。
3:25 休憩
3:35 「形容詞:結合価と活用」仮題
青山文啓 桜美林大学
(要旨)
動詞に較べれば数も少なく,結合価の多様性も稀薄な形容詞の用法を記述するのは,
一見簡単に思える。日本語の活用語は語幹と語尾に分離できる。しかし,語幹が持つ結
合価情報だけでなく,語尾の持つ活用情報を,終止,連体,連用の三種に類型化して記
述を進める必要がある。こうした記述プランの末に見えるのは,終止用法でこそ結合価
は多様性を見せるが,連体や連用に行くに従い結合価を減少させ,独自の用法を発展さ
せる活用語の生態である。
4:35 「デジタル設計工学における言語の対称性についての検討」
小川清、斉藤直希、渡部謹二、堀武司
名古屋市工業研究所、北海道立工業試験場
(要旨)
論理回路とソフトウェアをデジタル設計工学あるいは論理設計工学として体系化を図
ろうとしている。設計指針の一つとして、対称性を検討しているが、用語体系(用語の
木)の対称性も、指標の一つとして検討している。専門分野の用語の木を、どのような
軸で対称に定義可能かを検討したい。
5:35 休憩
5:45 「言語学・数学・IT」
山田学 JOMONあかでみぃ
(要旨)
数学が言語学を規定するのではなく、言語学 (〈対象言語論〉) が数学を規定する。
IT の歴史は、遠く、ライプニッツの構想やブール代数から始ります。ならば、言語学と
数学の関係を反省しておくことが、機械翻訳としても必要です。昨年発表した論文「対
象と言語」を数学方面へ具体化した論文「現実論としての数学を」について LACE研究会
向けにご紹介いたします。日英機械翻訳のための思索課題にも言及いたします。
6:45 終了
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