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言問い亭 12月号 (1999年)


 言問い亭12月号 小目次 

  • 第170号 −− 的を得た質問? −− 1999.12.05

  • 第169号 −− しがみつく −− 1999.12.04




  •  第170号 −− 的を得た質問? −− 1999.12.05 

      先日、アンドロメテック社の前田慎一さんから、
    
    「まとをえた」をATOKで変換すると「当を得る/的を射る」の誤用と表示されるので
    すが、そうなんですか?
    
    というご質問を頂きました。「ええっ?」と思って考えてみると、確かに「的」は
    「射る」ものであって、「得る」というのはおかしい気がします。でも、私も普段
    何気なく「的を得た質問」などと言っているような気がします。
    
     そこで辞書をいろいろ調べてみたのですが、「的を射た」はだいたい全ての辞書に
    載っていますが、「的を得た」を載せている辞書はひとつも見つかりませんでした。
    それどころか、小学館「現代国語例解辞典」には、「的」の項目説明の中にちゃんと
    「的を得る」は誤り、と書いてあります。
    
     ATOKの指摘のように、「当を得る」と「的を射る」が頭の中で混乱・混合して「的
    を得る」に成ってしまったようです。ちなみに「当」を学研「国語大辞典」で引いて
    みると、
    
    とう[当](一)<<名>>道理にかなっていること。適切であること。「今日は強行軍
    になるだろうから、三人の朝と昼の飯を炊いて行こうという彼女の発案は -- を得て
    いたが、<新田・縦走路>」「-- を失する」
    (二)省略
    
    と書いてありました。
    
     ところで、わざわざ「的を得た」が誤りだとATOKや現代国語例解辞典が指摘してい
    るということは、この誤りがそれだけ広く普及していることを逆に証明しているので
    はないでしょうか? そういうことを知りたければ、最良の手段は「インターネット
    検索」ですよね。で、早速「当を得た」を検索してみたら、ある、ある、以下のよう
    に(本当はもっとずっとたくさん有るのですが、最初の数件のみ御紹介します)「誤
    り」を含んだ記事がわんさと見つかります。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」と
    いうところです。
    
    http://www.jsf.or.jp/sln/ph/explore.html
    必要に応じ、生徒に的を得た質問をして検討方向の修正を図る。 
    
    
    http://www.fuji.ne.jp/%7Esarahtt/oldboard/board4/message/181.html
    まさに的を得た感じ!それだけ・・・言いたかったの 
    
    http://biz.nifty.ne.jp/chuiyaku/syokai/kanto/ibaragi/kikkodo/kikkodo.htm
    現代人の「からだの不安」に的を得たアドバイスを
    
    http://web.kyoto-inet.or.jp/org/k-joc/act/iinkai/MM.html
    的を得た公演内容で出席者一同、大変盛り上がった講演会でした。
    
    http://www-jtta.ge.niigata-u.ac.jp/webnews/wn.misc/a00944.html
    ですから物事の捉え方が明快かつ論理的で、書かれていることはいつも
    的をどんぴしゃり得ています。
    
    http://www.ktarn.or.jp/Futures/1996JFL/Player/suzuki_frame.html
    彼の一番の長所は攻撃面での的を得たオーバーラップにあると私は思います。
    
    http://www.dokidoki.ne.jp/home2/kuntihov/otagawa/aegi/aegi_10.html
    洗練された1文節は下手に並べ立てられた美辞麗句より遥かに多くのことを語る…
    まさか彼らがいきなりこんなに的を得た1句を持ってくるとは…すごい、すごすぎ
    る。
    
    http://www1.plala.or.jp/coro/plalaboard/message/1669.html
          > *毎日信じられないくらい楽しい
               > *毎日信じられないくらい楽しくない
               > 
               > のどちらかだと思うんだけど
               > いかがか。
    
               ははは(笑)
               かなり的を得たお答えです。
    
    http://s7ms-3.nara-edu.ac.jp/%7Ez977608/text/pori.htm
    「人は環境によって作られる」
    なんて恐ろしく、そして的を得た言葉であろうか。
    
    
    http://www.shake.hans.or.jp/helth/cacbc.html
    詰らない相手に激しい恋を感じて、彼女(彼)を救い出せるのは、此の世に自分しか
    居ないと云う風な、ドンキホーテ的思い込みをするタイプです。その為、周囲に酷い
    迷惑を掛けても案外平気で、何が的を得た身のこなし方なのか、さっぱり判って居な
    いタイプです。
    
    **********************************************************
    
     もちろん、正しい方の「的を射た」を含んだ文章も、同様にたくさん見つかります。
    前田さんに御願いして件数をカウントしていただいたら、両者はほぼ五分五分のよう
    です。そのうちに、「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則が「的」にも
    貫徹するかも....
    
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     第169号 −− しがみつく −− 1999.12.04 

      11月30日(火)に福岡大学付属病院の内科で診察を受けて、風邪薬をたくさ
    ん頂いてきました。毎日3食後に錠剤を2種類、粉薬を1袋、そして液体の薬をビン
    の1目盛り飲みます。4日間それを続けて、ようやく夜間のひどい咳き込みが止まり、
    眠れるようになりました。声の方も少し出るようになってきたのですが、数分間話し
    続けていると、だんだんかすれてきて、やがて出なくなってしまいます。電池切れの
    ウォークマンみたいで情けない気持ちです。
    
      アンデルセン童話の人魚姫は、愛しい地上の王子に会いたいために、魔女に頼ん
    で人間の身体にしてもらうのと引き換えに声を奪われてしまいますが、私も一時的に
    声を失ったことと引き換えに何か一時的にでも良いことが起こらないかなあ、と期待
    したのですが、なかなか現実はおとぎ話の様には行かないものですね。
    
     ところで先月東京に出張した際に飛行機の中で聞いた落語名人会。月亭八宝師匠の
    「秘伝書」の中で、昔の縁日などのかき氷はガリガリと氷を砕いて新聞紙の上にのせ、
    それに赤(イチゴ)、白(ミルク)、黄色(レモン)などの色の付いた甘い液体をか
    けて売っていたという話。氷を食べ終わっても、まだ甘い汁が新聞紙に染み込んでい
    るので、「はよ、しがまんかい!」と怒られたりした、という部分を聞いて私は、
    「しがまん? しがむ、という4段活用の動詞があるのか」と初めて知りました。
    
     福岡に戻ってから辞書を引いてみると、「広辞苑」「大辞林」には載っていません
    でしたが、「学研国語大辞典」には
    
    しがむ <<他5>> [関西の方言]強くかむ。何度もかむ。「おやじはすぐ荷を開け、
    出し昆布を千切って -- んでみた <<山崎・暖簾(のれん)>>」
    
    と出ていました。念のために、矢野環さんご推薦の「日本国語大辞典」(全20巻)
    で詳しく見てみると、
    
    しがむ[噛](柴田註:本当はこれの旧字体が載っていました)[[他マ四]]むしゃむ
    しゃかむ。強くかむ。かみしめる。*浄瑠璃・七小町の二「真実にせぬ徒(いたづら)
    でも、ほんの勘当受ふかと、是が悲しうござんすと袖をしがみ咽(むせ)返す」 
    *随筆・月旦大小心録の37「さざ波やしがめば、あまからいけれど、たんと斗はたら
    ぬじゃあろ」
    (方言)(1)いつまでもかんでいる。かみしめる。滋賀県彦根、大阪、兵庫県明石郡、
    奈良県 (2)しがみつく。「そうしがむとじゃまになる」静岡県小笠郡
    
    ということで、「関西」といっても大阪、奈良、および兵庫の明石、滋賀の彦根に限
    られるようで、京都では言わないようですね。また、昔は関西に限らず広く使われて
    いたようだという事も分かります。それから、静岡県小笠郡の所の記述を見ていて初
    めて気が付いたのですが、現代標準語でも広く使われている「しがみつく」という動
    詞は「しがむ」+「付く」という合成動詞だったのですね。「強く噛むようにガッチ
    リと付いて離れないようにする」ということのようです。
    
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