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言問い亭 7月号 (2003年)


 言問い亭7月号 小目次 

  • 第268号 −− ペシャワール会総会参加の記 −− 2003.07.23

  • 第267号 −− Bring them on (かかってこい) −− 2003.07.07




  •  第268号 −− ペシャワール会総会参加の記 −− 2003.07.23 

       九州各地に大雨と大水害をもたらした7月19日(土曜日)、雨天をついて「福岡ペ
    シャワール会」の20周年目の年次総会兼現地報告会が開かれました。日頃は会費を払
    うだけで何の活動もしていない「死せる魂」(ゴーゴリ)の私は、「こんな時こそ、枯
    れ木も山のにぎわい、で参加してみようか」と会場の「ももちパレス」まで出かけてゆ
    きました。500人が入る大ホールには、交通困難な天候にもかかわらず、7〜8割の
    席が埋まっていました。
    
     まず事務局からの会計報告がありましたが、この、どこからも公的な資金援助を受け
    ていない純粋のボランティア団体が、会員の会費とカンパだけで年間6億円を上回る収
    入を得ていることに驚かされました。扱う金額が高額になってきたので、財務をしっか
    りして、公認会計士による監査も受けていると言うことでした。そして、他の国際的な
    援助団体やNGOとは違って、事務局維持費や通信連絡費を除いた「現地の活動費」が93
    パーセントを占めているということで、そこに中村哲代表の強い意向が貫徹しているわ
    けですが、会場からの質疑応答で、「これでは、活動している人たち、特に若い人たち
    の将来に不安があるのではないか。必要に応じてもっと専従者給与を上げたらどうか。
    私は今よりもう少しお金をカンパする用意がある。」という発言もありました。
    
     次に、現地から帰国したばかりの中村哲医師の話がありました。9.11テロから
    「アフガン戦争」そして「アフガン復興支援・東京会議」で日本中、世界中の耳目が一
    時的にアフガンに集中したが、ペシャワール会の私達が訴え続けてきた大干魃のの様子
    は遂に真剣に伝えられることなく、アフガンは再び世界から忘れられようとしている。
    地球温暖化によってアフガンの水源であるヒンズークシ山脈の雪は年々後退を続け、干
    ばつはますます広がって農村地帯の砂漠化が進行し、農民と遊牧民が多数を占める膨大
    な難民達は帰りたくても故郷には帰れず、大都市に出て失業者や犯罪者、売春婦などに
    なっている。タリバン政府の崩壊後にわーっと一斉にカブールに戻ってきた300あま
    りの国際援助団体の内、半数の約150団体は、「次はイラクの復興だ」とバグダッド
    に移動してしまった。こういう団体は日頃の活動状況を見ていても、マスコミに注目さ
    れる事だけを目的にしているのではないかと疑いたくなる。外国からの援助資金の大半
    は国連やNGOを通して行われ、アフガン政府が実際に受け取った額は30パーセント前後
    にとどまり、役人の給与さえまともに払えない。地方の州政府にはほとんど1銭も回っ
    てこないのが実情だ。占領軍である米軍は終始安全な上空にとどまり、危険な地上戦を
    各地の「反タリバン軍閥」に請け負わせているので、大量の武器と資金が各軍閥に流れ、
    カルザイ政権を揺さぶっている。米軍の駐留は月間10億ドルという莫大な戦費を費や
    しているにもかかわらず、「タリバン・アルカイダ討伐」は決して進んだとは言えない。
    東部・南部での米軍、外国団体襲撃は今や日常化し、さらに激化の兆しを見せている。
    特にパキスタン北西辺境州(人口1千万)では、02年11月、住民の圧倒的な支持で親タ
    リバン州政府が誕生し、公然と米軍の活動を非難し、隣接のアフガニスタン東部各州に
    不穏な情勢を生み出している。
    
     いずれにしても、外国軍による力ずくの解決や性急な近代化は、少なくともアフガニ
    スタンでは、事態をこじらせ、いたずらに憎悪を増している。彼等の文化を脅かさず、
    見返りを望まぬ「生きるための支援」だけが、かえって安全保障である。現場の報道陣
    は、遅まきながら次第に事態を冷静に見つめ始めている。
    
     3月のイラク攻撃反対デモで、日章旗が星条旗、ユニオンジャックと並んで焼き捨て
    られた。このようなことは、親日感情の強いアフガニスタンでは考えられなかった。実
    際、現地事情を知る諸機構は、危機感を抱き始めている。従来中東で受けの良かったIS
    AF(国際治安維持軍)のドイツ兵士もカブールで殺された。収拾のつかぬ事態は誰の目
    にも明らかになっているが、一般民衆は生きることに精一杯である。しかし少なくとも
    東部では、米軍の存在を快く思う者は、米軍協力者を含めてほとんどいない。アフガン
    でもパキスタンでも、「圧倒的多数の反米的な民衆と一握りの親米政権」という図式が
    定着した。最近の顕著な動向は、遅々として進まぬ復興、貧困層のいっそうの困窮で、
    「『復興支援』の名で、アフガン人が食いものにされている」という認識が底辺に広が
    り、攻撃的な形で現れていることである。攻撃対象は米軍や駐留軍だけでなく、外国NG
    O, 国際赤十字、国連組織に向けられ始めている。3月には国連職員が死亡、4月には
    ユニセフのジャララバート事務所が爆破された。テロは次第に組織化されている。だが、
    これは決して一部過激勢力の跳ね上がり行為だと見ることは出来ない。一般に、攻撃さ
    れる外国人達は、現地と隔絶した高級クラブを作り、あまり現場を見ることがない。安
    全なオフィスにいて、現場の仕事を現地に下請けさせる構造は米軍と大差ない。長期的
    に見ると、アフガンの米軍はいずれ旧ソ連と同じ道をたどることになると思える。しか
    し、表層の政治的動きとは無関係に、人々の関心は「いかに耕し、いかに生き延びるか」
    という、平和な農村共同体の回復にあることを肝に銘ずべきである。
    
     実はペシャワール会も、タリバン政権崩壊直後の混乱期に、地方の1診療所が軍閥の
    略奪にあったことがある。この時は、その地方の長老会議の代表が直ちに軍閥のボスに
    かけ合いに行って、「ペシャワール会の活動は我々の生存にとってかけがえのないもの
    だから、略奪品は即時返還するように、」と説得してくれたため、診療車や医療器具な
    どの略奪品を運んで、軍閥の1部隊が返しに来た、そして部隊長が、「申し訳ないこと
    をした。今後は我々にも何か出来ることがあれば遠慮無く言ってくれ。出来るだけの協
    力はする。」と言って帰ったそうです。アフガニスタンの辺境では、まだ長老会議の権
    威が非常に高く、また中村医師とペシャワール会に対する長老達の信頼が非常に深いと
    いうことです。
    
     ペシャワール会がこれまでの医療活動に加えて、現在もっとも力を注いでいるのは灌
    漑用水の確保=砂漠化した農地の回復である。ペシャワール会では、これまでにもカレ
    ーズの再生、灌漑井戸を手がけてきたが、砂漠化が地球温暖化の結果であり、数世紀は
    治まる見通しがないと想定し、長期的な「灌漑15カ年計画」を打ち出した。「アーベ
    ・マルワリード(ペルシャ語で『真珠の水』の意味)と名付けたこの水路の概要は、全
    長16q、川幅4〜5m、流水断面積3.5q以上、灌漑予定面積1500ヘクタールで両
    岸に植林をし、予想生産高:小麦・トウモロコシ計約1万トン、生活可能人口:成人で
    約7万名を養うだけの壮大な計画が03年3月から開始された。中途部分の約7qが岩盤
    沿いの掘削になるが、幸か不幸かアフガンには未だに数千万発の地雷が埋められており、
    元ゲリラ兵だった作業員達は火薬の扱いになれていて、不発地雷から火薬を抜き取って
    岩盤を爆破するのに利用している。もっとも、近くに米軍のパトロールが通る時は、爆
    破音が聞こえると恐怖に駆られた米軍が爆撃してくるので、岩盤爆破は近くに米軍がい
    ない時を見計らって行っている。この水利事業には、流域沿いの地域の長老会議、州政
    府、軍閥の賛同を得て、元タリバン兵、元北部同盟の兵士、州政府雇用者、米軍雇用者
    など、政治的、軍事的な立場の違いを越え、予定流域の村人達が総出で土木工事に汗を
    流している。この大事業に参加する農民には当然労賃が払われるので、数千人の雇用が
    創出されたことにもなっている。現金収入がなければ、いやでも軍閥や米軍の雇い兵に
    なって殺し合いをやらなければならなかったかもしれない人々が、このように力を合わ
    せて、命の水のために共同で汗を流している光景をビデオで見せてもらって、私は非常
    に感動しました。「もっとも、夕方、工事を終えて村に帰ってからは撃ち合いをやって
    いるのかもしれませんが...」と中村医師がジョークを言って会場を笑わせました。
    
     中村医師の講演が終わって、会場から何名かの人が質問をしました。1人のご婦人が、
    「中村先生はアフガン問題ではたいへんなご努力をされていますが、イラク問題ではど
    うなんでしょうか。世界中であんなに戦争反対の運動があったのにイラク戦争が起きて
    しまったし、日本でも反対が多いのに自衛隊をイラクに送ろうとしています。私たちは
    無力で何も出来ないのでしょうか?」と質問しました。中村医師は、「『外国人がイラ
    クに何をしてあげられるか』よりも、『外国人はイラクに何をしてはいけないか』が大
    事なことだと思います。すべての外国軍が撤退し、外国からの武器援助などを止めれば、
    イラクのことはイラク人自らが、いずれは正しい道を選択してゆくだろうと信頼するこ
    とが大切ではないでしょうか。私自身はパキスタン、アフガニスタンでの医療活動、灌
    漑支援活動などで手がいっぱいですが、自分が出来ること、やるべき事を一歩一歩着実
    にやり遂げてゆくこと、その結果、アフガンの人々の自立・自活が進めば、それはイラ
    クの復興の大きな参考になると思います。これは一見、イラクの復興とは程遠い回り道
    のようですが、私にとってイラク復興に対して出来るいちばんの近道の仕事だと思って
    います。」と答えていました。そう、Think globally, act locally ですね。理想を高
    く持ち、少しずつでもそこへ向かって着実に実績を積み上げてゆく。一時的な失敗や世
    界情勢の激変にも一喜一憂せず、冷静沈着、質実剛健、初志貫徹、剛胆不敵に「我が信
    ずる道」を歩み続ける中村医師に人間的な凄みを感じました。
    
     最後に、付け足しになってしまって申し訳ないのですが、中村医師の講演の後に、昨
    年まで九州、沖縄、山口の各県でで働いていた勤め先を退職・休職にして、1年間ペシ
    ャワール会の現地活動に参加してきた若い医師(男性)、医療検査技師(女性)、農業
    指導補佐員(昨年まで小学校の教員だった男性)の方々による体験報告がありました。
    いずれも豊富なカラースライドを用いて、分かりやすく興味深い話をされました。この
    ような20歳代〜30歳代の若者たちが、日本で言えば極端な3K(危険、汚い、苦し
    い)の仕事を、時には文字通り命を賭して実行し、中村哲医師の後継者として立派に育
    っている姿を見て、私は小泉純一郎氏とは別の意味で、「日本の将来もなかなかのもの
    があるかもしれない」と、希望と勇気を与えられました。
    
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     第267号 −− Bring them on (かかってこい) −− 2003.07.07 

     ブッシュ大統領が戦争終結宣言をしたはずのイラクでは、アメリカ兵(およびイギリ
    ス兵)に対する襲撃事件が日に日に激しくなり、イラク戦争後のイラクの状況を報告す
    るアメリカ「ABCニューズ」TVのタイトル字幕が「Afetr the War」(「戦争が終わって」
    )からだんだん変化して、「Still in the Battle」(「戦闘は続く」)から、さらに最新
    のタイトルは「Guerrila War?」(「ゲリラ戦か?」)になっています。イラクの状況が
    「泥沼化」して、「ベトナム戦争の再現か?」という声まで聞かれるようになってきて
    いると報道されています。
    
     このようにイラクでアメリカ兵に対する襲撃が続いていることの対するコメントを求
    められたブッシュ大統領は "If they will attck us, my answer is 'Bring'm on.'" と
    答えていました。この 'Bring them on' という言葉が日本の報道機関では「かかってこ
    い」と翻訳されています。この Bring 〜 on という表現を辞書で調べてみると、(1)
    <病気・戦争などを>引き起こす。(2)〜を登場させる。(3)〜を上達させる、という
    3つの語義が書いてあります。ブッシュ大統領は恐らく(2)の意味で、「攻撃するする
    つもりなら、やって来い(出て来い、連れて来い)」と言いたかったのでしょうね。
    Bring them on の on は、on the stage/ring/box など、舞台あるいは(プロレスやボク
    シングの)リングの上へ、という気持ちではないかと思います。
    
     インターネットの Google による検索で「ブッシュ、イラク、かかってこい」を検索し
    てみたのですが、この件に該当するものは残念ながら見つかりませんでした。そこで英語
    に切り替えて、「Bush, Iraq, Bring」として検索したら、60万件もヒットしたのには
    驚きました。英語圏ではブッシュ大統領のこの発言はたいへんなセンセーションを巻き起
    こしたようです。もともと、「我々はイラクに十字軍の遠征に行くのだ。」と演説してイ
    スラム諸国から猛反発を食らうなど、「軽口」のブッシュはたびたび「舌禍」を起こして
    います。
    
     それにしても、このように泥沼化したイラクの「非戦闘地域」(?!)に米軍支援の自
    衛隊を派遣する、というのですから、自民党の長老議員ですら「殿、お気は確かか?」と
    小泉首相の「不退転の決意」に疑問を呈しています。
    
     新聞報道に依れば、熊本駐屯地の自衛隊員達も、「志願兵を募るのなら、私は志願しな
    い。しかし命令なら仕方がないから従う。」とか「今度ばかりはそうとう命の覚悟をしな
    ければならないだろう。」と述べているそうです。
    
     ブッシュの忠犬、医療費自己負担は30%に引き上げるし、消費税も10%への引き上
    げをねらっている、そしてひたすら「日米同盟の強化」「改革・改革」を連呼するだけの
    こんな狂信的な小泉首相の支持率が未だに40%ぐらいあるのが何とも不思議です。小泉
    純一郎氏が総理大臣になって以後、日本の国会は議論が成り立たない場になってしまいま
    した。小泉氏は、自分が質問されていることの内容を全く理解することが出来ず、質問と
    は無関係にひたすら「それには、抜本的改革をすればよいのです。」と自分の言いたいこ
    とだけを繰り返します。まったく問答になっていません。私は、最初の頃は小泉氏が計算
    ずくで答弁をはぐらかしているのかと思っていましたが、彼の「それなりに真剣な」態度
    を見ている内に、「この人の頭脳は他人から言われていることを理解する能力が欠如して
    いるのだ」ということがだんだん分かってきました。アメリカがイラク攻撃を開始すると
    世界で真っ先に支持を表明しましたが、「日本の世論の多数が開戦に反対していますが.
    ..」と記者団に質問された小泉氏は、「国民の多数が反対しても、やらなくちゃいけな
    いことはやります」と妙に確信した態度で答えていました。選挙公約が守られていないこ
    とを追求された時には、「公約を守ることなんかたいして重要じゃない」とアッケラカン
    と答えていました。やはりこの人の頭脳はどこかおかしいのです。だから自民党内で永年
    「変人」と呼ばれてきたのでしょう。
    
     ブッシュのような人が超大国アメリカの大統領として世界に君臨し、小泉のような人が
    世界第2の経済大国の首相として留まり続けることは、世界と日本の政治的・経済的矛盾
    がますます激化してゆくことになるのではないかと、私は非常に心配しています。
    
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