児童の学習における算数の計算順序と チョムスキー普遍文法理論の主要部パラメータ値との間の関係 / 上の位からの足し算・引き算をした方が良いかどうかは、 主要部パラメータの値で決まるか
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言問いメール510号「小学校算数・くり下がりのある引き算を地域ぐるみの取り組
みで落ちこぼれゼロにした久留米の教師たちの驚くべき教育実践」の中で私は、
『下の桁から』ではなく、『上の桁から計算して行く』という、一見すると極めて単純
な計算法が、なぜ、このように信じられないほどの威力を発揮して、子どもたちが「算
数 大好き!」になるような状態を作り出すのでしょうか。私は、言語学者 Noam
Chomsky の「普遍文法理論」における「主要部パラメータ」の原理が働いている、と考
えています。
と書きました。本日は、その事の言語学的な『証拠』を見付け出したので、それを以下
に公開します。誰かの引用ではなく、私が今朝(2011年10月10日)発見した
ばかりのホットニュースです。
世界の、私が知る限りの様々な言語では、1〜9迄の数詞は基本数詞であり、11〜
19迄の数詞は基本数詞を含む複合語になっています。それで、世界のいろいろな言語
について、これらの複合数詞がどのような構成を取っているのか調べてみました。
10以上の数の名称リスト
11 12 13 14 15 16
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英語: eleven twelve thirteen fourteen fifteen sixteen
ドイツ語: elf zwelf dreizehn fierzehn funfzehn sechzehn
フランス語: onze douze tre'ze quatorze quinze seize
ポーランド語:jedenas'cie
dwanas'cie
trzynas'cie
czternas'cie
pie,tns'cie
szesnas'cie
フィンランド語:
yksitoista kaksitoista
kolmetoista neljatoista
viisitoista
kuusitoista
上の何れの言語(主要部前置型)においても11以上の数字の名前は、
1 + 10, 2 + 10, 3 + 10, 4 + 10, 5 + 10, 6 + 10,
というように、1の位から数えています。
これは、明らかに日本語、ハングル(いずれも主要部後置型)の言語の数え方と逆に
なっています。
また、特筆すべきだと思われるのは、フィンランド語と非常に近い関係にある、同じ
ウラル語族のハンガリー語は、語彙的には非常に多くの単語がフィンランド語と似てい
るにもかかわらず、奇妙なことに文法的にはフィンランド語が主要部前置型、ハンガリー
語が主要部後置型であるために、19迄の数の名前がハンガリー語では日本語や朝鮮語
と同じように(上の位)+(1の位)となっていることです。
11 12 13 14 15 16
------------------------------------------------------------------
ハンガリー語:tizenegy tizenketto
tizenha'rom
tizenne'gy tizenot tizenhat
御覧のように、10 (ti'z) を格変化させて tizen にして、後ろから
egy, ketto, ha'rom, ne'gy, ... (= 1,2,3,4,...)
を後置しています。
つまり、11から19までの数詞を上の桁から数えるか、下の桁から数えてゆくのか
は、ハンガリー語とフィンランド語のような、語族としても、また語彙的にも極めて近
い言語間でもハッキリと異なり、チョムスキーの普遍文法理論の主要部パラメーターが
前置であるか後置であるかによって決定されることが分かりました。
また、このことから、1の位が普遍文法の主要部に当たり、10の位は主要部を修飾
する部位として、無意識のうちに意識されている(ちょっと形容矛盾のような表現です
が、他に良い日本語表現を思いつきません)ことがわかります。さらに、そのことは、
たとえば、フィンランド語では yksi, kaksi, kolme, nelja, ... (= 1,2,3,4,...) の
部分が主格の名詞のママであり、それを後ろから修飾している toista は動詞 toistaa
の活用形で、動詞としての意味は「繰り返す、反復する」であり、それぞれ 1, 2, 3,
4, ... から「一回りして来た」 という意味で1の位の数詞を修飾しています。もっと
も、現在では、英語の「〜teen」ドイツ語の「〜zehn」フランス語の「〜ze」と同様に
接尾辞化しています。フィンランド語では1の位に焦点が当たっているわけで、関心が
集中している焦点が主要部です。
同じように、主要部後置型のハンガリー語では、後置されている1の位
egy, ketto, ha'rom, ne'gy, ... (= 1,2,3,4,...)
を前から ti'z (10 を表す数詞)が tizen と格変化して1の位を修飾しています。1の
位は主格名詞ですから、修飾される形であって、他の単語を修飾する形には格変化して
いません。
このように、前置型、後置型の両方とも1の位の数詞が名詞主格形であり、10の位
が1の位を修飾していますから、10の位は修飾部であって主要部ではありません。そ
れ故に、10〜19迄の数詞は、前置型では1の位を表す数詞が前に来て複合数詞が形
成され、後置型では1の位を表す数詞が後に来て複合数詞が形成されるわけです。
この話を福岡大学応用数学科の卒業研究ゼミ(学部4年生のゼミ)で私がしたら、
「携帯依存症」を自称するM君が「あっ、それで分かりました。日本の携帯の数字キー
の配置は
987
654
321
<0>
と、だんだん小さい数字になって行くのに、ヨーロッパの携帯の数字キーの配置は
123
456
789
<0>
となっていて、まったく順序が逆なんですよ。」と教えてくれました。
なーるほど。日本は大きい数字をだんだん細かくしてゆく「ズーム・イン」型、ある
いは、探偵小説で言うと、次第に容疑者を絞り込んでゆく「シャーロック・ホームズ」
型であり、ヨーロッパ(ハンガリーを除く)は小さい数字からだんだん多きくなって行
く「ズーム・アウト」型、すなわち、探偵小説で言うと、犯人は最初から分かっている
のだけれど、その人物が犯人であるという証拠を探してゆく「刑事コロンボ」型なんで
すね。
M君の説明では、日本の携帯の数字キーの配置がヨーロッパの配置とは逆に、「大
ー> 小」となっていることで、ポケットの中に入れたままでも、日本人には非常にス
ピーディなブラインド・タッチが可能になっているのではないか、と言うのです。
こうなると、数の数え方ばかりでなく、指の運動神経の働かせ方まで、チョムスキー
の主要部パラメーター値が強く影響を与えている可能性がありますね。
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